37:寝言

 12月23日。どこをうろつきまわっていたのか、セイルは今日ルセイヌに到着した。ひとしきり城下町で歓声をあびた後、城にやってきて女性陣に挨拶をして。そして、現在。
「……ZZZ」
真昼間というのに爆睡中である。セイルの到着に慌ててマフラーを隠したルーシーも、今はもう再開している。
「それにしても、どこに行ってたんだろーねこの人」
「さあ?セイルだし」
「そうね、セイルだもんね……」
ヒロとレイシスがあきれたように会話するが、それでも起きそうにない。むにゃむにゃ、と幸せそうに眠るばかりである。
「ま、いいか」
たいしたことではないだろう。そう結論付けて、ヒロとレイシスはその部屋を出た。


 こんこん、とノックする。返事がない。
「ぐがー」
……いや、あった。
「セイル、まだ寝てるのか?」
アルヤが問いかけながらドアをあけると、想像通りまだ眠ったままのセイルがいた。
「……何やってたんだ?こいつ」
 気にならないこともないので、アルヤはちょっと観察してみることにした。
  その1、冬だというのに掛け布団も毛布もかけず、ベッドにそのまま眠っている。
「それも面倒なほど疲れてたのか?」
そう考えながら、観察を続ける。布団くらいかけてやってもよかろうに。
  その2、服がよれよれ。
「セイルにしちゃ珍しいよな、これは」
さて他には?
  その3、傷だらけ。
「あまりよく見えないくらいのかすり傷……しかも引っかき傷ばかりだけどな」
1、2、3を総合すると?
「どうだろうな。1番女関係、2番女関係、3番女関係ってとこか?」
「……うるせえ」
「あ、起きた」
セイルの地獄の底からあげたような低い声を、さらりと受け流してアルヤは答えた。
「お前、何してんだ」
「セイルこそ、何やってたんだ?」
疑問を疑問で返したアルヤにセイルは舌打ちした。
「いいから、寝させろ。頼むから」
「寝させてもいいならいいが、お前さっき寝言で……」
「寝言で何言おうが別にいいじゃねえか」
 ものすごく機嫌が悪そうにそう言うと、セイルはばふっと布団にもぐって頭からかぶった。
(慌てない……ってことは、別にまずいことしてたわけでもなさそうだな)
寝言というのは無論かまをかけただけだが、セイルはそれで「何を言った?」なんて慌てて尋ねたりもしなかった。
(ま、ルーシーが嘆くようなことでもなさそうだから、ほっとくか)
疑問はまだ未解決のままだが、これはもう寝させておくしかないだろうと結論付けて、アルヤはそっと部屋を出た。


 クリスマスまであと2日。結局なぞは解けるのだろうか?


No.32: talking in his sleep.

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